登録支援機関へ委託する方法と比較して、自社支援は費用の削減や運用の柔軟性といったメリットがありますが、企業自身が一定の条件を満たし、継続的に支援を実施する体制を整えていることが必要となります。
このブログでは、“自社支援に欠かせない条件と体制”について、行政書士の視点から整理していきます。
まず前提として、企業自身が適切な支援を実施できるだけの組織基盤を持っていることが必要です。特定技能制度では、支援計画の内容が現実に実行可能であるかどうかを厳しく見られます。例えば、労働関係法令や入管法令に違反した経歴がないことはもちろん、外国人の生活相談を受けられる環境が整っているか、住居や生活インフラの手配を自社で行えるか、トラブルが起きた際に責任を持って対応できるかどうかなどです。
さらに、特定技能外国人が複数名になると、支援担当者の稼働時間が不足したり、記録管理が追いつかなくなったりするケースも考えられます。制度上は人数の上限が定められてはいませんが、実務上「担当者1人につき何名まで管理できるか」を慎重に検討していく必要があります。支援を行う社員の勤務状況、業務量、社内の相談対応力など、細かな要素を総合して考える必要があります。
自社支援を行う企業で最も重要な要素が、支援責任者と支援担当者の配置です。
支援責任者は支援全体を統括する立場にあり、行政手続の理解や法令遵守の観点から支援計画を管理します。一方で支援担当者は生活ガイダンスの実施や行政手続の同行、相談対応など、日常の支援を実務レベルで担います。この二つの役割をどのように分担し、どのように連携させるかで、自社支援の質が大きく変わります。
支援担当者が日々の相談内容を記録し、それを支援責任者が把握したうえで支援状況を確認する。この基本的な流れがきちんと機能していれば、支援の質も高まり、定着率も向上していきます。逆に、名義上の配置だけで実際には担当者が支援に関与していないという状況になると、改善指導を受けたり、最悪の場合には制度違反と判断されることさえあります。
特定技能の支援では、生活オリエンテーションの実施記録、役所などへの同行の記録、定期面談の内容、労働条件の説明記録など、細かな支援履歴が求められます。
支援を行った事実だけでは足りず、「どのように、いつ、どの担当者が実施したか」を客観的に説明できる資料が必要になります。
また、外国人からの相談窓口を形式的に設けるだけでは不十分で、実際に相談しやすい環境が整っているかどうかも重要です。夜勤がある業種では相談できる時間帯を柔軟にする必要がありますし、母国語サポートが必要な場合は多言語での対応体制を整える必要があります。企業の規模や職種によって必要な体制は異なりますが、「話しかけにくさ」や「相談をため込んでしまう状況」を放置しないことこそが、トラブルの予防につながります。
自社支援は、一度体制を整えれば終わりというものではありません。
特定技能外国人の人数が増えるにつれて支援内容は複雑化し、状況に応じた支援方法の見直しも必要になります。さらに、制度改正にも対応していくことが重要になります。
そのため、重要なことは、「継続的に支援を実施できるかどうか」という点です。最初だけ整えても、半年後には担当者が不在になっている、記録が残っていない、相談対応が形骸化している・・・こうした状況に陥らない仕組みを作ることが、自社支援の成否を左右します。
特定技能外国人の自社支援を選択する企業が増えている背景には、人材確保とコスト最適化という現実的な理由があります。しかし、自社支援は単に制度の条件を満たすだけでなく、実際に支援を運用し続けるだけの体制づくりが欠かせません。
支援責任者と支援担当者の適切な配置、相談しやすい環境づくり、支援記録を残す仕組み、人数に応じた社内体制、そして制度改正に対応する柔軟さ──こうした視点を押さえておくことで、外国人が安心して働ける環境が整い、企業の人材戦略にも大きく貢献します。