特定技能外国人を雇用する際、登録支援機関へ委託していた業務を「自社支援」へと切り替える企業が増えています。コスト削減や社内コミュニケーションの深化が主な目的となりますが、入管実務の現場では「誰でも担当になれるわけではない」という厳しい現実があります。制度上、自社支援を行うためには、過去2年以内に中長期在留外国人に対する生活支援を適正に実施した実績を持つ担当者を社内に置くことが大前提となります。
ここで評価される実績とは、単に通訳をした、あるいは現場で作業を教えたといったレベルではありません。住居の確保や賃貸契約の補助、銀行口座の開設、社会保険や年金の手続き、さらには市区町村での住民登録への同行といった、生活に密着した具体的な実務経験が問われます。加えて、3か月に1回以上の定期面談や、その内容を記録に残す相談対応、さらには労基署やハローワークとの調整経験まで、多岐にわたるサポート能力が審査の対象となります。
実務上の安全圏を考えるのであれば、1年以上継続して複数名の外国人を支援した経験が望ましいでしょう。技能実習の生活指導員としての経験のみでは、特定技能制度との違いから評価が弱まる傾向にあるため、技人国や留学生の就労支援実績など、制度の特性を理解した上での補足説明が求められます。また、人数体制については、制度上1名でも可能ですが、その担当者が退職や不在となった際のリスクを入管は非常に注視します。そのため、主担当と副担当を置く2名体制を構築しておくことが、審査をスムーズに進めるための鍵となります。
また、支援責任者と支援担当者の役割分担についても、多くの企業が疑問を抱くポイントです。結論から言えば、中小企業でよく見られる「1名が責任者と担当者を兼任する」形は、実務上全く問題ありません。また、その担当者自身が外国人の母国語を話せる必要もありません。大切なのは、外国人が理解できる形で支援が確実に実施される体制が整っているかという点です。
例えば、日本語で行政対応や記録管理を行う日本人スタッフが支援責任者兼担当者を務め、実務上の言語サポートを別の外国人社員や通訳担当者が担うという形は、入管からも「役割分担が明確である」と高く評価されます。ただし、ここで注意すべきは、通訳担当者に支援を丸投げしてしまうことです。支援の責任の所在が曖昧になり、書類上の名義と実態が乖離していると判断されれば、不許可のリスクが高まります。あくまで責任者が全体を統括し、言語担当者はその指示の下で補助に徹するという構図を、体制図やマニュアルに明文化しておく必要があります。
自社支援への切り替えは、単なる「やる予定」の宣言ではなく、これまでの「やってきた証拠」の提示です。職務経歴書や面談記録、オリエンテーション資料など、過去の支援実績を裏付ける書類をいかに精度高く揃えられるかが成否を分けます。現在、外部委託で特定技能を受け入れている企業であれば、まずは社内担当者を委託先の業務に並行して関わらせ、実務の記録を積み上げていくことから始めるのが、最も確実で安全な道筋と言えるでしょう。
自社支援体制を構築するための「支援実施マニュアル」の作成や、現在の支援体制が要件を満たしているかの診断など、より具体的なお手伝いが必要な際はお気軽にご相談ください。
社内での支援への切替が可能かどうか、必要な手順や体制整備のポイントを丁寧にご説明いたします。貴社の現状をお聞かせいただければ、最適な進め方をご提案いたします。
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