深刻な人手不足の影響で、「特定技能外国人」を採用する企業は年々増えています。この制度では、外国人の方が日本で安心して働き続けられるように、企業が適切な支援を提供することが求められます。
支援の方法には大きく2つのパターンがあります。
ひとつは「登録支援機関」に業務を委託する方法、もうひとつは企業自身が直接支援を行う「自社支援」です。ここでは、それぞれの違いや、自社支援を始める際のポイントを行政書士の視点からやさしく整理します。
自社支援とは、登録支援機関に依頼せず、企業が自ら支援業務を行う方式です。制度上は企業自身が支援を担っても問題はなく、必要な体制が整っていれば入管庁も自社支援を認めています。
支援内容は、仕事に関するフォローだけにとどまらず、生活のサポートにも広がっています。入国前の情報提供に始まり、住まい探しの同行、生活オリエンテーション、日本語学習の機会づくり、定期面談や相談対応など、外国人の方が日常生活にスムーズになじめるような支援が求められます。
こうした業務は登録支援機関に依頼することもできますが、社内で対応できる部分を自社で行うことで、委託費を大幅に抑えられるメリットがあります。特に複数名を雇用している企業では、この効果が大きく、自社支援への切り替えが進んでいます。
登録支援機関との最も大きな違いは、支援を担う主体がどこにあるかという点です。自社支援では企業自らが日常のフォローや生活面のケアを行い、外国人社員との距離が近いサポートが実現できます。一方、登録支援機関では、法務省の登録を受けた外部専門家が支援を代行します。
費用の面でも大きな差が生まれます。登録支援機関に委託すると、一般的に1人あたり月2〜3万円ほどの委託費が必要になります。人数が増えるほど総額は膨らみ、年間では数十万から数百万円になることも珍しくありません。これに対し、自社支援では社内人件費など最低限のコストはかかりますが、外部委託が不要になることで、年間の支出を大幅に抑えられるケースが多く見られます。
また、運用の柔軟性という点でも違いがあります。外部の登録支援機関は一定の品質が期待できる反面、契約内容の範囲内での対応が中心となり、企業ごとの文化や職場環境に合わせた細やかな配慮は難しい場合があります。その点、自社支援は日常で外国人社員と関わる企業側が対応するため、現場の状況に合わせた柔軟な対応がしやすくなります。
さらに、入管への手続き体制にも違いがあります。自社支援の場合、支援業務そのものは企業が担当しつつ、行政書士が書類作成や届出をサポートすることで法令遵守を確保できます。登録支援機関でも行政書士と連携することはありますが、最終的な書類の内容は外部依存となる傾向があります。
総合的に見ると、企業規模や受け入れ人数によってどちらの方式が適しているかは異なりますが、複数名の特定技能外国人を継続的に雇用している企業では、自社支援のメリットがより明確になり、切り替えを検討するケースが増えています。
自社支援の大きな魅力は、経費の削減と運用の柔軟さにあります。支援委託費が不要になることで、特に人数が多い企業では年間数百万円規模のコスト削減につながる可能性があります。また、社内に担当者がいることで、外国人社員からの相談や不安にすぐ対応でき、職場定着にも良い影響を与えます。
加えて、自社で支援体制を整えることで外国人雇用に関するノウハウが蓄積し、今後の採用や育成にも活かせるという大きなプラス面があります。
一方で、自社支援には守るべき要件もあります。支援責任者や支援担当者を社内に置き、外国人と意思疎通ができる語学力を備えていることが望まれます。また、面談記録や相談記録、生活オリエンテーション記録などを正確に残し、5年間保存する義務もあります。
これらを適切に行わない場合、入管庁から指導を受ける可能性があるため、実務に不慣れな企業では行政書士と顧問契約を結び、書類作成や調査対応を専門家に任せる体制を整えるケースが多く見られます。
特定技能の自社支援は、費用を抑えつつ柔軟に運用できるメリットの大きい仕組みです。しかし、記録管理や定期報告などのルールを守ったうえで運用することが欠かせません。
自社支援に切り替えることで外国人社員との距離が近くなり、社内にノウハウが蓄積されるなど、長期的な雇用戦略にも良い影響をもたらします。
支援体制を整えながら、自社の状況に応じて早めに検討を進めることをおすすめします。